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道路天空率を算定する位置

みなし道路の反対側の境界線を利用する場合の取り扱いについて


 道路天空率を算定する位置は建築基準法施行令第135条の9(法第56条第7項第1号の政令で定める位置)で定義されています。天空率を算定する位置は、同法第1項第1号にて次のように規定されています。


第135条の9(法第56条第7項第1項の政令で定める位置)

ー 当該建築物の敷地(道路高さ制限が適用される範囲内の部分に限る。)の前面道路に面する部分の両端から最も近い当該前面道路の反対側の境界線上の位置


 『「前面道路」とは何か』ですが、一般的には「当該建築物の敷地の接する道路」と解されています。また、『「前面道路の反対側の境界線」とは何か』ですが、一般的には「前面道路の現況の反対側の線」と解されていますが、認定された幅員が与えられている道路(法第42条第2項で規定される道路や、都市計画道路などの認定幅員を有する道路)の場合は、「前面道路の中心線から道路幅員の1/2だけ外側の線」と解されています。



 令第135条の9の括弧書きは、それ以前を説明し後段を受けるための区切りとして使われているので括弧書きを抜いてみると、『当該建築物の敷地の前面道路に面する部分の両端・・・』となります。括弧書き内に『道路高さ制限が適用される範囲内の部分に限る。』と記されていることからも判るように、道路高さ制限を受けていない範囲を含めないことも要求仕様であり、その最も近い当該前面道路の反対側の境界線上の位置が天空率を算定する位置、となります。

 図1をご覧ください。8m入隅道路に接する敷地です。道路高さ制限の適用される範囲の端部点A点Bに対する前面道路の反対側は、点A’点B’となり、天空率を算定する位置はオレンジ色で示したA’B’区間、となります。







  1. 道路高さ制限が適用される範囲が令第135条の6第2項(制限勾配の異なる区域)や令第135条の6第3項(令第132条または令第134条第2項により区分される区域)によって区分された場合に、区分された区域ごとに天空率を算定する位置を配置し直す取り扱いが数多く見受けられます。

    しかし、道路高さ制限が適用される範囲が何らかの要因(道路高さ制限の異なる区域や令第132条、令第134条第2項など)で区分されたとしても、「道路高さ制限が適用される範囲」であることには変わりなく、また、範囲全体としての形状に変わりはありません。

     よって、その範囲の「前面道路に面する部分の両端から最も近い前面道路の反対側の境界線上の位置」も変わらない、と考えることもできると思われます。


1:最も近い前面道路の反対側はA’−B’



 道路高さ制限が適用される範囲内とは、法第56条第1項第1号で定義されているところの、すなわち、前面道路の反対側の境界線から法別表第3(は)欄に掲げる距離以下の範囲内です。(図1では法別表第3(は)欄の距離を20mとしています。)

勾配が異なる場合(令第135条の9第2項)や前面道路が2以上ある場合(令第135条の9第3項)は、区分された区域ごとに、もっとも近い前面道路の反対側を決めていきます。

では、図2はどうでしょうか?

敷地の規模が少し小さくなっています。

道路高さ制限の適用される範囲の端部点A点Bから最も近い前面道路の反対側は点A’B’(同一点)となります。



2:最も近い前面道路の反対側の境界線は点になる



 前面道路の境界線の長さが現況道路の幅(幅員ではありません。)を下回った場合、天空率を算定するは一点となります。

 このような考え方に基づき前面道路の反対側を決めていくことは「法第56条第1項第1号で規定される道路高さ制限を、同法第7項第1項により緩和する。」とする法の目的から、道路高さ制限と同様の取り扱いが可能となり矛盾は起こり得ません。


道路高さ制限では、図2のような敷地の場合、敷地内全域は逆円錐状(スリバチ状)に高さが制限されます。


 しかし、異なった考え方をする行政や指定機関の取り扱いも散見されます。図2のような入隅道路に接している場合は、「行き止まり道路」の取り扱いに準じて道路高さ制限を適用する、とするものです。

 図3を見てください。


3:入隅道路を行き止まり道路とみなした場合の前面道路の反対側の境界線



 道路内にオレンジ色の線(みなし道路の反対側の境界線)が見受けられます。

8m道路をそれぞれ行き止まり道路と考え、「行止り道路等に関する斜線制限の取り扱いについて 46首建調発第43号(昭和46年4月6日)(図4)」を適用しています。


4:
行止り道路等に関する斜線制限の取り扱いについて
46首建調発第43号(昭和46年4月6日)

 この取り扱いの特徴的な点は、「みなし道路の反対側の境界線」を採用して道路高さ制限を適用している点です。取り扱いの考え方を以下に示します。


1)道路の行き止まり部分の前面道路の境界線から幅員aの距離だけ道路方向に戻った位置から高さを制限する。(E−F間の高さを制限)


2)道路の行き止まり部分の前面道路の境界線の端部から半径aの円弧状の位置から高さを制限する。(A−E間の高さを制限)



 3)図4のA点から図4下方向は通常通り、前面道路の反対側の境界線から高さを制限する。

 しかし、上記1)2)とも「みなし」であり、法第56条には前面道路の反対側の境界線を「みなすことができる」旨の記述がないことから、令第135条の9第1項第1号でいう「前面道路の反対側の境界線」として採用する法的根拠に乏しい、と考えられます。

 また、上記取り扱いは前面道路の境界線の形状や接道長さによっては矛盾が起こり得ます。以降、考えられる矛盾点について記述します。

矛盾点1 法別表第3による道路高さ制限の適用される範囲が変わってしまう


 道路高さ制限は『前面道路の反対側の境界線』から、法別表第3(は)欄の距離(以下、適用距離)内で適用される旨が、法56条第1項第1号に記されていますが、みなし道路の反対側の境界線を採用した場合、現況の道路の反対側の境界線からの適用距離よりも、みなし道路の反対側の境界線からの適用距離は、より敷地の奥に伸びて建築物の高さを制限することになります。

 建築制限を厳しくすることにも繋がる(安全側理論?)取り扱いですが、取り扱いの違いによる道路高さ制限適合建築物の形状のバラツキが出ることが考えられます。軽微な道路の凹凸は円弧状に「みなされない」取り扱いも多く身受けられます。

 そもそも、前面道路の反対側の境界線を「みなすことができる」、とは記されていません。




5:道路高さ制限の適用される範囲(敷地内緑部)の奥往きが変わっている









矛盾点2 令第135条の9第1項に記載されている「最も近い前面道路の反対側の境界線上の位置」が現況の道路の反対側の境界線上でなくなる


 「みなし道路の反対側の境界線上」を採用したとして、『最も近い前面道路の反対側の境界線』は円弧状のみなし道路の反対側の境界線の端部となる。(図6点A’点B’)

 この場合、令第135条の9第1項第2号により天空率を算定する位置を配置する際、円弧部にのみ均等に配置されることになり、せっかく作図した道路の反対側の直線部(道路上の直線)が天空率の算定する位置として採用されることがなくなってしまいます。

 A’B’間は円弧でつながっているので、天空率を算定する位置を均等に配置することは可能なようです。円弧部分を廃止し、「みなし」行き止まり道路の境界線から幅員の距離だけ戻った直線部分だけを天空率の算定位置として採用しようとする動きもあるようなので、検証してみます。



6:円弧部の端部A’B’が「最も近い」



その場合にも同様の問題が起こります。


問題点3 天空率を算定する位置が均等に配置できなくなる


 円弧状のみなし道路の反対側を問題視し、直線だけにしたとしても「最も近い前面道路の反対側の境界線上の位置」に問題が残ることには変わりません。

 図7をご覧下さい。



7:A’B’間が接続できない



 みなし行き止まり道路の行き止まり部分の反対側の境界線をオレンジ色で示してあります。道路高さ制限の適用される範囲(敷地内緑部)の両端点から最も近い反対側は点Aに対して点A’、点Bに対して点B’となります。

 せっかく作図したみなし行き止まり道路の行き止まり部分の反対側の境界線(オレンジ色)ですが、必要令第135条の9第2項にある「前項の位置の間の境界線」が存在しないため均等に配置できず天空率を算定する位置は点A’と点B’の二点」となります。


令第135条の9第1項の天空率を算定する位置は、オレンジ色の線上に均等配置したいところですが、「道路高さ制限の適用される範囲内が前面道路に面する部分の両端」から「最も近い当該前面道路の反対側の境界線上」とする規定なので、繋がっていない線間を均等配置することはできません。




 これまで解説したように、矛盾点を列挙できる取り扱いを定常的に取り扱いに含めることは、建築確認における一定の基準によって判断すべき前提が簡単に崩れる恐れを内包している、と言えると思われます。


 よって、行き止まりでない道路に図4で示されるような行き止まり道路の取り扱いを適用することには推奨されません。


/html/considering road/index.html - 更新日時:09/02/09 00:00